外来種 問題 : 「侵略的外来種リスト(仮称)植物」に関する意見 2-3

3.外来牧草に係わる問題

③の外来牧草に係わる問題として、利用にあたっては注意を要するものとされているが、その「注意」しなければならない内容・根拠は不明確である。なぜならば、外来牧草については、A.競合、B.交雑の問題は考えられないからである。

巷では、外来牧草の種子が河川氾濫原に定着し、氾濫原植生と競合し駆逐しているとされている。
しかし、このような評価の元となったウィーピングラブグラスが鬼怒川上流のカワラノギクなどの河川氾濫原に侵入・定着し、氾濫原在来植生と競合し、駆逐しているという論文については、4省庁による「平成18年度生態系保全のための植生管理方策検討調査」第2回委員会にて現地確認を行い、ウィーピングラブグラスが氾濫原植生と競合し駆逐したという実態は無かったことが判明している。

河川管理事務所職員と委員との質疑により次の事実が明らかにされている。

氾濫原植生が衰退した時期、すなわちウィーピングラブグラスが目立つようになった時期は、鬼怒川上流にて川砂利採取を止めた時期に一致している。
ウィーピングラブグラスは、河川護岸工の実施、上流にダムを建設した事による流量の減少と河床低下、および、川砂利採取の停止による河川の攪乱、氾濫原の消失、という、人為的な河川改変行為により、氾濫原植生が衰退した箇所に侵入したものだったのである。
さらに、河川管理事務所職員は、論文の現場は、一度カワラノギクが消滅した処であり、花が綺麗であったために河川管理事務所の周りに撒いていたものを持込、復元を図っているという話がなされた。
外来牧草による在来植生の駆逐という問題では無く、人為的に河川環境に手を加え、陸化した事によりウィーピングラブグラスが、新たに生じたニッチに侵入定着したという事が事実たったのである。

現在では、このような事実を踏まえ、河川環境は人為的な環境改変による不可逆的な変化が起きているとされるようになっている。すなわち、管理により人為的な攪乱を発生させなければ氾濫原植生の維持は不可能なほど、河川環境の改変は進んでしまったのである。

ウィーピンクラブグラスが河川氾濫原植生との競合し、駆逐しているという論文そのものが事実誤認であり、外来牧草は在来植生を脅かすという思いにより色づけされたもの、結論が先にありきの論文であったものと想像できる。

以上は、河川上流部の氾濫原植生に対するものであるが、河川中下流域の堤防ではライグラス類、トールフェスクなどの寒冷地型の外来牧草が繁茂するが、これは、当初実施した芝張りの刈り取り管理が不十分であるために、比較的肥沃で日当たりの良い環境を好む寒冷地型の外来牧草が侵入・定着したものであり、これもまた、人為的な環境改変の結果と言える。

河川堤防では、寒冷地型牧草に由来する花粉症が一時問題となったが、これも又維持管理の問題である。

低草高を維持できるように、集約的な草刈り管理を行うならば大型の寒冷地型牧草は消滅し、ノシバ群落、あるいはチガヤ群落を維持する事ができる。逆に、先に述べたウィーピングラブグラスの生育する河川の場合であっても、そのまま放置するならば植生は推移し、さらに大型のススキ群落、さらには低木叢林状の群落へと遷移して行くものである。

維持すべき目標群落を明確にし、管理を行ってこなかったため発生した問題と言える。
自然環境に対し人為的に手を加え環境改変を行った場合は、目的・用途に合致した維持管理を行う必要がある。

その管理を行わずして、あるいは粗な管理を行うことにより、外来牧草が侵入・定着したとしても、それは、侵略的に侵入したというよりも、侵略可能な環境を準備したからだと解釈することが科学的な態度と言える。しかし、なぜか、侵入した外来植物である外来牧草は侵略的であり、在来植生と競合・駆逐するものとして取り扱われている。

このような非科学的な態度では、問題の解決に向かえ事は困難となる。外来植物により発生した問題なのか、管理など人為的な問題なのか、キチッと弁別した上で問題の解決に向かうべきである。

ちなみに、林野庁の調査結果では河川最上流の沢筋では、日照条件が不良であるため、外来牧草は定着が困難であり、定着したとしても生活環を全うすることはできない、とされている。

外来牧草は、治山・法面緑化のみならず、採草地・牧場などの農業利用、スキー場、ゴルフ場などのレジャー施設、公園・緑地の芝生、競技場などのスポーツターフなど多様な利用形態がある。その施用箇所は、山地から都市に及ぶ広大な範囲に及んでおり、その使用を制限することは困難である。また、代替植物も存在しない。

特に、奇しくも愛知目標達成年と同じ年、2020年に開催される東京オリンピックに備え、スポーツ選手強化のために日本各地でスポーツグラント、芝地が造成されることとなるものと考えられる。

外来牧草(洋芝)は、日本芝には無い、踏圧などに対する強い耐性持つものであり、逆に言うならばこの点が侵略的と評価されることとなるのであるが、だからといって、その使用に制限を加えるならば、スポーツグランドの整備すらおぼつかなくなってしまう。

主立った外来牧草・芝草の使用制限を加えるならば、スポーツによる健全な青少年の育成、レジャーの場を奪うのみならず、東京オリンピックの開催すら危ぶまれる状態を招来しかねないものとなる。

侵略的外来種に関し、「特に問題となる被害」として、「b 経済・産業への被害」を挙げている。

これは、侵略的外来種がはびこることによる農作物などに対する被害についてであるが、これとは逆に、外来種を用いないことによる産業被害についても具体的に見積必要がある。

 単に概念的、理念的な取扱、あるいは、僅かな論文を根拠として示すのみでは無く、外来植物の使用を取りやめ代替植物を用いる場合に発生する費用、外来植物を使用する事による(農作物等に対する)被害額、維持管理に関する費用、駆逐する際に必要な費用、等について、具体的に試算し、対費用効果の点からの評価も行うべきであろう。

(文責:中野裕司)

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